マリア
第25章 後奏曲
智への疑念を払拭できないばかりか逆に大きく膨らんでゆくばかりで…。
斎場で、
智たち家族が乗り合わせていた霊柩車の姿を見て尚それは、
確信めいたものになっていく気がしていた。
到着したマイクロバスから降りていく人の流れに倣って歩いてゆく。
傘を持たない俺は、小走りで火葬場へと入っていき、
啜り泣く人だかりをしばらく遠巻きに見ていた。
その、人だかりから少し離れて、
ハンカチで口許を抑え、今にも泣き出しそうなおばさんを支える智がいた。
『智の側にいてあげて。』
礼音…。
俺は一体どうしたら………。
そして、いよいよ荼毘に付される、という時、
斎場のスタッフが取り囲んでいた人々を遠ざけ、棺を重い扉の前にまで運んでゆく。
すると、それまで、智のそばで大人しくしていたはずのおばさんが、智の腕を振り切り、スタッフの体にしがみつき叫んだ。
「止めて……お願い!止めて!!」
智「母さん!!」
「あの子を…あの子の体を燃やすなんて…灰にするなんて……そんな…そんな惨いこと…っ!!」
スタッフに掴みかかり、泣き叫ぶおばさんを、智とおじさんとで制する。
重い扉の閉められる音がして、
おばさんは礼音の名を呼びながら、
その場でワアワアと泣き崩れた。