マリア
第25章 後奏曲
智side
僕は、雨粒が傘を激しく叩きつける中、
煙突からもうもうと上がる煙を見ていた。
控室には翔くんたち参列者の人たちがいて、
遠目からでも、窓際に陣取っている翔くんと時々目が合うから、多分、僕のことをずっと見ているんだろう、と思って、
翔くんから姿を隠すように傘を少し傾けて差していた。
初め、うっすら青色をおびていたはずの煙は白一色となりやがて灰色に変わる。
程無くして、その煙の色は灰色から黒煙に変わって、雨に何とも言えない匂いが混ざって、
瞬間口許を覆った。
耐えきれなくなった僕は控室に向かって歩き出す。
中に入るとすぐに、傘を畳み、制服に付いた雨粒をぱたぱたと払い落とした。
さっき感じた鼻を突くような異臭が、雨粒に姿を変え、僕に纏わりついているような気がして。