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マリア

第25章 後奏曲



「人間の今のこの姿なんて、魂の入れ物じゃん?」



ねぇ?と、



僕はお茶を一気に飲み干す。



コトリ、と、



空の湯呑みをテーブルに置き、



激しさを増す雨の中、未だもうもうと煙突から立ち上っている黒煙を黙って見ていた。





僕はセレモニー会館へと戻るバスの中でずっと考えていた。



翔くんは僕を疑ってる。



僕が礼音を手にかけた、と思っている。



僕は礼音の遺影を持つ手に嫌な汗がじわり、と滲むのを感じて、



ハンカチで手を拭った。



バスがセレモニー会館に到着してすぐ、翔くんの姿を探した。



「翔くん!」



僕は礼音の遺影を抱えたまま翔くんの手を引きそっと耳打ちした。



「精進落としのあと連絡するから待ってて?」



と。



意味深な目線を投げかけた途端、翔くんは真っ赤な顔を逸らしながらこくりと頷いた。









不届きなやり取りをする僕らを、遺影の中の礼音が見つめていることを知りながら……。



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