マリア
第25章 後奏曲
『公園で待ってて?』
そう、メールを送りながら、雨が上がったばかりの道を父さんの運転する車で帰宅した。
帰宅し着替えてから待ち合わせ場所へと向かう。
雨上がりの薄暗い公園。
公園の奥まった場所にあるベンチの側に翔くんはいた。
ベンチには座らず、立ったままスマホを弄りながら。
いつもだったら座って待っている筈のベンチなのに、
雨が上がったばかりで雨粒が滴り落ちていて座われなかったんだろう。
僕が一歩足を踏み出すと、足下の小枝がパキッと鳴って、
翔くんがこちらを見た。
そして、口許を少しあげただけの笑みを浮かべながら翔くんの側に歩み寄り、
指と指を絡めるように翔くんの手を握った。
「行こ?」
翔くんの手を引き歩き出す。
そうして鬱蒼と木々が生い茂る中にポツンと佇む、
少し古びた公衆トイレの個室に二人で入り施錠した。
僕は個室のドアが閉まると同時に、翔くんの顔を引き寄せキスをした。
「んくっ……ふっ…うっん…」
甘い声を漏らす僕の体を壁に押し付け、
翔くんは夢中で僕の唇を吸い続けた。