マリア
第26章 終曲
部屋から追い出したお袋の気配を感じられなくなってから智に電話をした。
智『もしもし?』
「ごめん智、急に?今、平気?」
智『あ…と、ごめん、今…』
礼音が亡くなってから精神のバランスを崩していた智の母親は、
智が受験ということもあって、
時々、実家で世話になることもあったが、
今日は智と一緒に過ごすことになっていた。
智『翔くんごめんね?落ち着いたら後で連絡していい?』
「いや…いいよ?」
智『そう?』
「あの…さ、1コだけいい?」
智『何?』
「智はさ、俺のこと…」
言いかけて、でも…
「やっぱ、いい。」
智『どうしたの?変な翔くん?』
電話の向こうで智が笑う。
智『翔くん、今日はごめんね?会えなくて。』
「いや、いいんだけど、さ。」
智『じゃあ…』
「あっ!!もうすぐ誕生日…だろ?」
智『あ、そっか。』
「プレゼント、何がいい?」
智『プレゼント…うーん、急には出てこないなあ。』
「考えといてよ?」
智『分かった。』
電話越しに聞こえてきたおばさんの声に、
俺は慌てて電話を切った。