マリア
第26章 終曲
智「ダメ?」
「いや…空の綺麗なところ、って、あんま聞かないからさ?」
智「そっか…難しいか。」
向かいから歩いてくる人影に気づき、慌てて手を離す。
そして、気配が感じられなくなるとまた、智の手を掴んだ。
智「じゃあ、翔くんの行きたいところでいいよ?」
「いや…ちょっと探してみるよ?」
スマホを取りだし検索画面を出す。
すると、智の手が伸びてきて俺のスマホを奪い取った。
「あっ!!俺のスマホ!」
智「今やっちゃダメ!」
「何でだよ!?」
智「だって、今デートしてるのに!!」
と、智はそのままコートのポケットにしまいこんだ。
「…分かったよ。」
智「わかればよろしい」
智はあっさりスマホを返してくれた。
智「ね…お腹すいてない?」
どこからともなく漂ってくる食欲を掻きたてる香りに空腹感が増す。
「どうりで…誰かさんがもっともっと、ってお強請りしてくるからくたくたの腹ペコだよ?」
智「んもぉ!翔くんのバカ!エッチ!大キライ!!」
真っ赤になって、べしべし叩いてくる智の手を掴む。
「俺は好きだよ、智のこと。」
智「し…」
「智が俺のことキライでも俺は大好きだから。」
智「翔くん…」
俺を見上げ立ち尽くす智の体を、
力一杯抱きしめた。