マリア
第26章 終曲
帰りの電車の中は連休最後の日とあって、ぐったりしている家族連れでごった返していた。
席にありつけなかった俺たちは、入り口付近によりかかって、
二人で窓からの景色を眺めるフリをしながら、互いの手を握りあっていた。
時折、辛そうに腰を擦る智を気にかけながら空席を待ったけど、
結局、空席にありつけることなく電車は駅のホームに滑り込んでいった。
でも、降りるのは智だけ。
もう、
握った手を離さなきゃならないのに離せなくて、
逆に、離そうとする智の手を強く握りしめていた。
困ったように笑いながら、
でも、智は諦めたように俺の手を握り返してくれた。
電車を降りて、
俺を見送るからと、反対側のホームへと続く階段を智はついてきてくれた。
俺から遅れぎみな智を階段の途中で待ち、人影まばらな通路を智の手を引いて歩いていった。
そうして、電車が出たばかりの反対側のホームに二人降り立ち、ベンチに腰かけた。
徐に、智が少し話をしないか、と言うので、目についた自販機から缶コーヒーを二本買い、智の隣に座り直した。