マリア
第26章 終曲
吐く息も白い、初冬の駅のホーム。
コートを羽織ってきただけの智の首に、
俺は智からもらった赤いマフラーを巻き付けてやった。
少し照れたように小さな声でありがと、と言うと、
首に巻き付けた赤いマフラーに顔を埋めて笑った。
しばらく話し込んでいて、やたらと人が増えてきたな?と、思っていたら、
ホームにアナウンスが流れてきた。
やがて電車が目の前に入ってきて目の前でドアが開き、
智が俺の肩を押す。
でも、
でも、足が動かない。
見かねた智が俺の体を電車の中へと押し入れる。
振り返ると智が笑っていた。
笑いながら、小さく手を振っていた。
またね?なんて言いながら。
ドアが閉まって、電車がゆっくりと動き出す。
…またね?…
あれ?確か、
そう言っておきながら、会えずじまいの人がいたような気がする。
誰だったかな……
『じゃ、今度こそ、またね?翔くん?』
礼音……
『智の側にいてあげて?』
電車のドアに隔てられた向こう側の智に礼音の声が重なる。
『もしもの時は…
その時は、私が智を連れていくから…。』