マリア
第27章 悲愴曲
「だから…?」
「それに、あの噂が事実ならあの子と関わるのはもう…」
「人殺しと関わるのはやめろ、って言いたいわけ?」
「な、何もそこまで言ってないじゃないの!受験の大事な時期に、そういうことに関わると…」
「言ってるじゃねえか!何だよ!!聞きたくねぇよ!!そんな話!?」
つい声を荒げてしまって、ハッとした。
しまった。電話…繋がってたんだ!!
急いでシーツを捲りあげ隠していたスマホを見ると、
電話は既に切れていた。
「ちょっと、翔!何なの、その態度は!!母さんはアンタのことが心配で…」
軽く舌打ちすると、スマホを握りしめ部屋から出ようとお袋に背を向けた。
「どこ行くの!!」
その質問に答えることなく、
俺は表へ飛び出した。
向かった先は智の家。
家を飛び出したあと、歩きながら何度か電話をかけた。
LINEもした。
もちろん、メールも。
が、いつまでたっても智から音沙汰はなかった。
お袋との会話を聞かれたか…。
俺は苦々しい気持ちで智の家の呼鈴を押した。
『はい?』
「櫻井ですけど…あの……智…くんは…?」
ちょっと待ってて、と、
智のお父さんは静かに玄関のドアを開けた。