マリア
第27章 悲愴曲
どなた?って、俺のこと?
「あ…ああ、私の友だちだ。」
おじさんは慌てておばさんのもとへと駆け寄り、部屋から出るよう言い含める。
「でも、お茶をお出ししないと?」
「僕がやっておくから、君は奥で休んでなさい。」
おじさんはおばさんと共に部屋から出ていった。
今の…?
呆然としているところへ、再びおじさんが姿を表す。
「これでもまだ私たちに関わるというのかい?君は?」
何も言えなかった。
雅紀に監禁された二宮、
それを助けようとして、雅紀に刺され、歩けなくなった松本先生、
二宮を監禁し、松本先生に刃を向け、少年院に送られてしまった雅紀、
我が子に我が子を殺められ、ショックのあまり精神障害に陥ってしまった智の母親。
と、
双子の兄に無惨にも命を摘み取られてしまった妹の礼音。
みんな、みんな智が…
「分かったらもう帰ってくれ。そして、もう二度とここへきてはいけない。」
有無を言わさず追い出されてしまった俺は、
それでもまだ俺は、
現実を知ってなお、
愚かにも智のことを守ろうとしていた。