マリア
第27章 悲愴曲
智の父親に家を追い出されてから、どこをどう歩いて駅まで辿り着いたのか記憶にないほどに衝撃は大きく、
知らない間に、電車を一本見送っていたことさえ今さっき気づいた。
あ……智…
…智に連絡しなきゃ…
そんな状態でも俺はLINEはしていたらしく、
いつの間にか既読がついていた。
…今どこ?…
『黙っててごめんね?』
やっと、返ってきた智からの答え。
『びっくりしたでしょ?』
学校を卒業するまでは、都内に居を構える叔父の元にいるのだ、と教えてくれた。
だから、安心して?と。
卒業したら、父親の実家がある地方の大学に進学するけれど、と。
だから、もう…
『僕たちもう、会わないほうがいいんじゃない?』
俺のためにもそうしたほうがいいんじゃない?と。
予想していた通りの言葉。
…何言ってんだよ!?会わない、なんて…
…イヤだよ、そんなの。
お願いだから、そんなこと言わないでくれよ…
お前がどうしても、って、言うなら、
せめて…あの約束だけは…
『分かった…。』
じゃあ待ってる、と、
約束通り、あの場所で、
自分が好きな空に一番近い場所で待ってるね、と、
そして、この日はここで、
智からの連絡は途絶えた。