
マリア
第27章 悲愴曲
でも、そんな罪悪感なんて、智への強い思いの前には簡単に吹き飛ぶ。
年が明ければ、センター試験まではあっというま。
試験が終わったら…
このセンター試験を無事乗りきったら、智に言おう。
約束の日、二人でこのまま家を出て、
どこか遠くへ、
俺たちのことを誰も知らない場所へ行って、
二人で生きていこう、って。
だから、今は、ただひたすらやるべきことをやる。
やり遂げて結果を出して必ず智に言うんだと息巻いていた。
センター試験の結果がよかったからといって、何が変わるわけでもないのに、
それぐらい当時の俺は、
回りが見えなくなっていた。
「どう?勉強、捗ってる?」
「え?あ…うん。」
相変わらず、
必要以上に気を使っている家族に対する後ろめたい気持ちは常にあったけど。
「今年のお正月は天気がよくて初日の出も拝めたけど…」
と、お袋は窓を開け、辺りを見回した。
「信じられないわね?こんな暖かいのにもう少ししたら、この冬一番の寒さになる、なんて。」
そう、センター試験を境に、この冬一番の寒気の影響で、ここ東京でも大雪の予報が出ていた。
