マリア
第27章 悲愴曲
「センター試験に重ならなきゃいいけど…」
「…そうだね。」
俺を含め、全ての受験生にとってセンター試験は通過点。
それはそうだろう。
それですべてが決まる訳じゃないんだし。
でも、俺にとっては大事大事な通過点。
智に、俺はお前のためにこんな頑張ったんだぞ?って胸を張って言いたいんだ。
「それはそうと、あなた志望する大学は変えてないんでしょ?」
「え?あ、当たり前だろ?」
「アンタの様子だと、合格間違いなしね?」
「ごめんお袋、集中できないんだけど?」
「あっ!!そうね?ごめんなさい。」
機嫌がいいと口の滑らかなお袋に早々の退場を願い出ると、お袋はそそくさと部屋を出ていった。
そして、お袋の足音が聞こえなくなってからスマホをカバンから取りだし、
机の上に置いた。
タップすると、そこには智。
広げた参考書の上に顔をのせ気持ち良さそうに眠る智がいた。
智「あっ!?翔くんてば、また…!」
シャッター音に驚いて目を覚ました智が声を張り上げた。
怒ってスマホを取り上げようとする智の腕を引き寄せキスをした。
「好き」だと言葉にして伝える代わりに、
何度も何度もその唇にキスをした。