マリア
第27章 悲愴曲
当日の早朝。
霙混じりの雨が窓を叩きつける音に目が覚めた。
俺はベッドを抜け出し、
予め枕元に用意してあった服に着替える。
普段はこんなことしないんだけど、
脱いだパジャマをきちんと畳んでベッドの上に置いた。
早々に荷物を詰め込んでパンパンになっていたカバンを押し入れから取りだし、
取り敢えず中身をチェックした。
後は、当座の生活費としての、
俺名義の貯金通帳。
あ、あとは、スマホ…
スマホで時間を確認しつつポケットにしまう。
「よし、これで準備万端。」
顔を洗ってこようとしてドアノブに手をかける。
あれ?開かない。
「おっかしいな…?」
何度かドアノブを押し開けようとするもびくともしない。
何で開かないんだ…?
「悪いけど、お父さんにお願いして簡単に開けられないようにしてあるから。」
ドアの向こうから聞こえる、お袋の声。
「どこに行くつもりかは知らないけど、今日はこのまま大人しく部屋にいてもらいます。」
くそ…バレた…!
「私が何にも知らないとでも思ってるの?アンタが通帳まで持ち出したこと。」
「そんなことよりここ開けろよ!」
内側からドアを叩いたり、体当たりを繰り返すが
部屋で反省していなさい、と言い残し、
お袋は部屋の前から立ち去った。