マリア
第28章 慟哭曲
くそ…やっぱりか。
ポケットから携帯を取りだし、智の電話を鳴らす。
だが、電源を落としているのか繋がらない。
やっぱ、怒って帰ったのかも…。
でも、LINEしといたら後で見てくれて…
いや、今日、このまま電源落としたまんまだったら意味ねぇか…。
動かない電車。
繋がらない電話。
どうすれば…?
その時だった。
思いが通じたのか、智から着信が。
智『今どこ?』
「今、駅にいるんだけど、電車が動いてなくて…」
そっか、のあと、何やら考えているかのように黙り込んだ。
智『じゃあ…やめよっか?』
「いや、行く!行くよ!!」
智『でも、電車が…』
「歩いてく。」
智『え…?歩く、って。』
「電車で二駅ならすぐだよ?」
智『でも…この雪じゃ…』
「…待ってて。」
智『翔くん…。』
「絶対行くから。」
短い沈黙のあと、待ってるから、と言って電話は切れた。
二駅ぐらいだったら歩いていけないこともないだろう。
いつ動くか分からない電車待ってるよりは、歩いた方が早い。
よし…!
詰めに詰め込んだカバンを抱え、駅を出た。