マリア
第28章 慟哭曲
午後から本格的に降りだした雪は、時間を追うごとに激しくなり、
足を踏み出すごとに、降り積もった雪に足を取られそうになる。
道を走る車の流れも、心なしか遅く感じる。
前を恐々と歩く女性を追い越して、
斜め前から降りしきる雪に立ち向かうように歩き続けた。
歩き始めたはいいけど、あと、どれくらいかかるんだ?
てか、俺、今どの辺歩いてる?
顔を叩きつけるように吹き付けてくる雪に視界が奪われ、回りがよく見えない。
辛うじて見えるビルの看板で、自分が今、どの辺りにいるのかは想像できた。
電車で二駅、って、意外に歩くんだな?
電車だからあっという間だから、人間の足でもイケるかも?って、思ったけど…
智「翔くんて、勉強はすごくできるけどちょっと抜けてるよね?」
いつだったか、智にそう指摘されたことがあった。
あの頃はまだ、礼音と付き合ってて、智のことは特別な存在としての認識はなかった。
礼「うんうん。私もそう思う。」
ねー?と、顔を見合わせる二人は、
普通に仲のいい兄妹だった。