マリア
第29章 追想曲
あれから俺はある人の影響で、医者を志した。
受験に二度失敗し、
これでダメならあきらめよう、と三度めにして漸く合格した。
そして、現在、
とある地方都市の市民病院で小児科医として勤務していた。
なぜ、東京じゃないのか、と、両親に言われたけど、
俺にはれっきとした理由があった。
ここには、
俺にとって、かけがえのない人が眠っているから。
そして、明日は俺の誕生日。
で、あると同時に、
その人が永遠の眠りについた日。
だから、明日、
俺はその人に会いに行く。
「それにしても櫻井先生、働きすぎじゃありませんか?まだ、若いから、といってあまり無理すると体壊しますよ?」
「大丈夫です、って?明日から三連休なんだし?」
「…ほんとですか?」
まあ、こう思われるのも無理はない。
休みでも、呼び出しがあればすぐに走ってくるし、
盆暮れ正月も、ゆっくり休んだ記憶もない。
「そんな仕事ばかりしてると、結婚もできないじゃありませんか。」
戸間さん、マジ、お袋みたい(汗)。
と、いうのも、彼女の、高校生になる息子がサッカーをしているということもあって、
頻繁に俺の体を気遣ってくれていた。