マリア
第5章 三重奏曲
礼「あ!!ねぇねぇ智。金魚すくい、やろ?」
病気なんてウソみたいにはしゃぎ回る礼音の姿に、翔くんも僕も思わず苦笑してしまう。
「やろう?じゃなくて僕にやれ、ってことでしょ?」
礼「もー、どっちでもいいじゃない?」
早く早く、と手招きする礼音の隣に陣取り、
礼音が指差す金魚を次々と掬いあげていった。
礼「すごいすごい。こんなにたくさん。」
ホントに…
こんなにたくさんどうするんだろ?って数の金魚に目を輝かせる礼音にため息をつく。
翔「俺、少しもらってくから。」
笑顔で耳打ちする翔くん。
「ごめんね?」
翔「平気。礼音のワガママには慣れてるから。」
「僕も…慣れてるつもりだったんだけどね?」
苦笑する僕と翔くんの回りを甘い香りがフワリ漂う。
翔「今川焼じゃん?」
「…行っちゃう?」
翔「当然でしょ?」
互いに顔を見合せ、思わず笑ってしまう。
「ほら、僕らの前をヒラヒラしていたチョウチョがもう並んでるよ?」
翔「ぶっ!ホントだ!?」
見れば、もうすでに礼音の姿は店先にあって、
もういくつかパックに詰めてもらっているところだった。