マリア
第5章 三重奏曲
そうしてしばらく露天を見て回っていると、
人波の流れが少しづつ速くなってゆく。
ふと夜空を見上げると、
一発目の花火が鮮やかに花開いたところだった。
翔「おーい、どうした?智くん。置いてくよ?」
いつの間にか礼音の足に追い付いた翔くんが、
思わず立ち止まった僕に手招きする。
その間にも、二発、三発目が鮮やかに夜空を彩る。
「僕はいいよ?二人で見てきなよ?」
翔「えっ?何?聞こえない。」
「僕がいたらデートの意味ないでしょ?」
…そうだよ。
王子さまとお姫さまのデートに下僕がいたら台無しでしょ?
僕はなんかあったら連絡して?という意味合いでスマホを高々と掲げながら指さした。
一瞬、翔くんが寂しそうな顔をしたような気がしたけれど、
僕は気づかないふりをし、元来た道を戻っていった。
鳥居の側で待ってるから、というメッセージを翔くんに送ったあと、
花火に集中出来てるのかな?ってぐらい頻繁にメッセを送ってくる翔くんに思わず苦笑してしまった。
せっかく気をきかせてあげたのに、
翔くんてば、意味ないじゃん?