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マリア

第29章 追想曲



結局、



外が明るくなってくるまで眠れなかった俺は、



寝不足のまんま行かなきゃなんなくなって、



アクビを連発しながら車に乗り込んだ。



念のため買っておいた眠気覚ましのドリンクを飲み、顔をパンパン叩く。



今日明日には雪、という予報が出ているせいか、海岸沿いを走ると強風に車があおられ、ハンドルを持ってかれそうになった。



そのお陰で、運転には集中できたけど。





目的地までは車で一時間弱。



景色は砂浜から街並み、、そして、山間へと移り変わり、



目的地の駐車場へと辿り着く。



そこから共同墓地までは少し歩かなきゃならなくて、



風と寒さを凌ぐためにコートの襟を立て、マフラーをぐるぐる巻いた。





あの、赤いカシミヤのマフラーを。






途中、花屋で買ってきた花の香りが、強い風に煽られ不意に鼻を掠めた。






『うーん、いい匂い♪』


なけなしの身銭をはたいて買った、白のスプレーバラ。



礼音と付き合いはじめて、初めて渡すバースデープレゼントにと買った、小さな白いバラの花束。



『いいなあ、礼音は。僕も欲しい。』



そう言って君は、



鼻をピタリと花に押し付けるようにしていつまでもくんくんと匂いを嗅いでいた。



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