
マリア
第29章 追想曲
先生はパソコンに必要なデータを打ち込んだあと、
このあと時間はあるか、と聞いてきた。
潤「和也がもうすぐ家に帰ってくる。三人で少し話さないか?」
「話…」
少し困った顔をする俺を見て先生が笑う。
潤「心配しなくても、大野くんへの恨み辛みを君にぶちまけようなんて思っちゃいないよ?積もる話がしたいだけなんだ。」
「でも…」
動かなくなった先生の足にイヤでも目がいってしまう。
潤「まあ、正直、僕も人間だ。こんな体になったのは彼のせいだ、と恨んだこともあった。」
でも、と、
先生はポケットから取り出したスマホをタップし、俺の方に向けた。
潤「そのお陰で気づいたこともあったしね?」
そこには、笑顔でじゃれ合う兄弟の姿が。
すると、ただいま、と、
遠くで若い男の声がして、
パタパタと元気よく走ってくる足音が聞こえてきた。
和「兄貴、腹減っ……あ…。」
二宮だった。
和「え…なん…どうしてここが?」
潤「偶然だったんだよ?」
と、先生は二宮に笑顔を向けた。
