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マリア

第29章 追想曲



松本先生は積もる話をしよう、と呼び止めてくれたけど、



智の話題に刷り変わったとたん、二宮の反応は冷ややかだった。



和「大野さんは気の毒だとは思うけど、俺や兄貴にしたことが消える訳じゃないから。」


「…そうだね?」


潤「和也、やめなさい!」


和「兄貴だって、自分が五体満足だったら、って言ってたことあったじゃない?」


潤「今さら四の五の言ってもしようがないだろ!?歩けないなら歩けないでどうやって生きていったらいいいのか考えればすむ話なんだから。」


和「…ったく、ほんとお人好し。どうせ、死ぬんなら兄貴を歩けるようにしてくれ、ってんだよ!!」



ご馳走さま、と、ボソッと言うと、



二宮はリビングから出ていってしまった。



潤「すまない。逆に嫌な思いをさせてしまって…」


「いえ…いいんです。実際、智はそれだけのことをしたんだし…」



ご馳走さまでした、と、


食器を手に立ち上がろうとすると先生が笑顔で制する。



潤「そのままでいいよ?誘ったのはこっちだし?」


「でも…」


潤「和也があんな感じだから黙ってたんだけど、実は一度だけ大野くんと会ったんだ。」



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