マリア
第30章 祝歌
俺自身、雅紀のことを許したワケじゃないけど、
俺が許したから、って、雅紀の過去が帳消しになるワケじゃないけど、
雅紀がやらかしたことが原因で本人だけじゃなくて、家族までもが後ろ指をさされることになったりして、十分すぎるぐらいに罰は受けている。
それに、涙ぐんで唇を噛みしめている雅紀を見ていたら、
隣で雅紀に寄り添う彼女のことを思ったら、
こうして、智の命日に墓参りに訪れたことを思ったら、
もう、いいんじゃないか、って思った。
「雅紀、彼女は…?」
雅「あっ……!!彼女…ふきちゃんは…」
よく見るとその彼女、小さな顔の割には、少しふくよかな気がして、
俺はあることに気づいた。
「彼女、もしかして…おめでた?」
雅「あっ…う…うん、そう…なんだ。」
「そっか…」
雅紀の隣でふっくらしたお腹を愛おしそうに撫でる彼女の顔は幸せそのもので、
時間が雅紀を許してくれたのだ、と思った。
「予定日はいつ?」
雅「えっ…と……三月二十日ごろだったかな?」
「ふーん?」
こんなところで長話してるとお腹の子供によくないからと、
雅紀たちを霊園から程近い大衆食堂へと誘った。