マリア
第30章 祝歌
「そっかあ、あの雅紀がオヤジにねぇ…」
お茶を啜りながら、幸せオーラを振り撒く雅紀と彼女を感慨深げに見つめた。
「馴れ初めなんて聞いていいの?」
雅「えっ?あ…うん。」
馴れ初めは?なんて聞かれたら大抵の人は照れまくるもんなんだけど、
何気に彼女と視線を交わしたあと、真顔でぽつぽつと語り始めた。
雅「翔ちゃん、俺ね、実はここに来んの初めてなんだ?」
「…そう……なんだ?」
雅「何年もずっと行かなきゃ行かなきゃ、って思ってたんだけど、なかなか足が向かなくて…」
そんな時期に、彼女に出会ったのだ、と教えてくれた。
雅「でも、まだ、ずっとどうしよう、って思ってて。そしたら、彼女のお腹に赤ちゃんがいる、って分かって…。」
しかも、彼女のお腹の子供、
雅「実は双子らしいんだ。」
「え……?」
雅「しかも…」
二卵性で、男の子と女の子。
雅「何だか…単なる偶然に思えなくて…。」
『早くしないと間に合わないから…。』
偶然だって?
…違う。偶然なんかじゃない。
あの日の、
十五年前の、礼音が残していったあの言葉。
あれは…
このことだったんだ。