マリア
第30章 祝歌
「はあ…疲れた。」
中「病人とはいえ、子供って元気だな?」
「ホントですね…」
ぐったりと医局の椅子に体を預ける。
中「ったく、トランプなんざ、香取が始めたことなんだろ?人に押し付けてどこ行ったんだよ?急患が入ったわけじゃあるまいし?」
「小児科医たるもの、トランプを通して子供を知るのも大事な仕事だ、って。」
中「…押しつけられただけだろ?」
中居先生は仮眠用のベッドに寝そべった。
中「櫻井。お前、ここに来て何年になる?」
「丸二年…ですかね?」
中「しっかし…櫻井、お前変わってんな?何もこんな田舎の病院に来なくても…」
「だって、ここ、小児科医がいないじゃないですか?」
中「そうだけど…」
中居先生は立ち上がって、ポットのコーヒーをカップに注ぎながらこちらを向いた。
中「飲むか?」
「頂きます。」
中「もしかして、昔、転校した初恋の女の子を追っかけてきたとか?」
「うーん?当たらずとも遠からず、ってとこですかね?」
おどけて首を傾げてみせたあと、笑いながらコーヒーを一口飲んだ。
中「で?会えたのか?」
「ええ…まあ…」
中「え!!じゃ、今、付き合ってるとか?」
「うーん?一年に一回のペースで会ってはいますけど?」
中「なんだそりゃ?」
お前の彼女は織姫か?と突っ込まれながら、つかの間の休息を堪能した。