マリア
第30章 祝歌
中「で?」
「で、って…あ、俺は…」
先輩、いきなりフるの、止めてください(汗)。
「あの、笑わないでくださいよ?」
中「何だ、笑い話なのか。」
「…違います。」
すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み終え、テーブルの上に静かに置いた。
「誰かに助けてほしかったんです。」
中「…ふーん。」
「俺の言ってる意味、分かります?」
中「何となく…。」
「…良かった。事実、俺、今の仕事で人助けしてる、って言うよりかは回りの人たちに助けられてる、って気がしてて…」
中「お前、ヤブ医者だからなあ…」
「…やっぱ、向いてないのかな?」
中「真に受けんな、って!?誰でも初めはそんなもんだから。」
中居先生はヘコむ俺の頭を笑いながらポンポンと叩いた。
中「俺らは患者の人生の脇役に専念してりゃあいいんだ、って?」
潤「僕は…思いあがってたんだ。」
どうぞ、と、松本先生はお茶を淹れてくれた。
潤「医者になれば誰でも助けることができる、って、まるで自分が正義の味方とか神様にでもなれるような錯覚を起こしていたんだ。」
先生はカップを口につけてすぐ、何かを思い出したようにすぐ離した。
潤「和成に、困ったことがあったらなんでもする、って言ったら、じゃあ、母親を生き返らせろ、って言われてね?」
「そんなの、神様でも難しいのに。」