マリア
第5章 三重奏曲
智「ふぁ…。」
智は、心にずっと引っ掛かっていたことが吐き出せて安心したのか、
眠そうに目をしばたかせた。
智「翔くんごめん。着いたら起こして?」
智は俺の返事も聞かずに、シートの背もたれに寄りかかって目を閉じた。
いっそのこと…
いっそのこと智に本音をぶちまけてしまおうか、と思った。
左で礼音が寝息を立てている間に、
智が眠りに落ちてしまう前に。
でも、何て言うつもりなんだ?
…ごめん。俺、ホントは礼音のこと、そんなに好きじゃないんだ。
えっ?さっき、好き、って言ってたのに?
じゃあ、他に好きな人でもいるの?
…そ、それは…
誰?誰なの?
答えらんないの?
その相手は、どこの誰なの?
ねぇ…翔くん?
翔くん、てば!
………駄目だ。
やっぱ、言えるわけない。
だって、智は幼なじみで親友で、
男同士で…。
雅『もーいーじゃん、素直に認めたら?』
ま、雅紀!?
雅『自分に正直になりな、って!?』
正直…って、どういう意味だよ!?
雅『だって…今の翔ちゃん、その気があんのにバレないように必死こいて取り繕っているようにしか見えないからさあ?』