マリア
第5章 三重奏曲
お、お前が変なこと言うから!だから余計に変に意識するんじゃないか?
雅『へぇ…意識してんだ?』
声もたてずに雅紀が笑う。
違っ!!ただの言葉のあやだろが!?
雅『ふーん、まあ、いいけどぉ?』
不気味な笑みを残し、
頭の中の雅紀はフェードアウトしていった。
気づいたら、
手は汗でぐっしょりしていて、
おまけに礼音だけじゃなく、
智までもがいつの間にか俺に凭れかかるように眠っていた。
高くて綺麗な鼻筋。
うっすら空いた唇からは、規則正しい呼吸音が繰り返される。
昔から女の子みたいで可愛かった智。
でも、それがイヤだといつも愚痴っていた智。
妹思いの智。
友達思いの智。
智…。
君は、どんな人を好きになって、
どんな人の傍で生きていくんだろう。
考えただけで苦しくて、
苦しくて、
苦しくて泣きそうだ。
…そうだよ。
その通りだよ。
認めたくなかっただけだ。
俺は…
俺は友達としてじゃない、
礼音を見るような目で智を見ていたんだ。