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マリア

第5章 三重奏曲



智side


父さんの車に乗り込んですぐ、翔くんにメールした。



電車を降りてから、



いや、降りる少し前から仏頂面を崩さない礼音をちら、と見やった。



礼「何?」


「何なの?さっきから?」


礼「別に…。」



家に着いてもその仏頂面は崩さず、



自室へと足早に歩いてゆく。



どうしてもその理由を知りたかった僕は、



そのあとを追いかけた。



「翔くんと何かあった?」



礼音の足がピタリ、と止まる。



「何か言われたの?」



礼音の前に回り込んで顔を覗き込む。



「礼音?」


礼「…もしかして翔くん、他に好きな人がいるのかな?」


「まっ…まさか!?」



だって、あの時、礼音のことが好き、って…。



礼「だって…あんな顔する翔くん、初めて見たから…」


「あんな顔?」


礼「目の前の私じゃなくて、どこか遠くを見ているような…。」



そう言えば…





そう言えば翔くん、即答してなかったかも…





礼「やっぱり、すぐ死んじゃうかも知れない女の子より健康な女の子の方が…。」


「礼音!!」



僕は取り乱した礼音を落ち着かせるため背中を擦った。



「取り敢えず部屋に戻って着替えてきなよ?」



泣きそうな顔で礼音は頷く。



「ちょっと話さない?お茶でも飲みながら。」



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