マリア
第7章 恋慕曲
智「お兄さん…松本先生が…。」
「智…くん?」
視点の定まらない智が気になり、思わず声をかけた。
智「ごめん。僕、ちょっとお手洗い行ってくるね?」
立ち上がり、智はフラフラ歩き出す。
途中、人にぶつかりそうになりながら、何とかトイレに辿り着く姿を見届けてから、パフェを一口食べた。
和「そんな衝撃の事実だったかなあ…?」
ボソッと呟くと、二宮くんは自分のスプーンを手にし、まだ、半分以上ある智のパフェを掬いとった。
和「好きな人と俺みたいなヤツが兄弟だった、ってことが。」
好きな…人?
手を止め、こちらを見る俺の視線に気づき、またも二宮くんは声もたてずに笑った。
和「…怖い顔しちゃって。」
「えっ?」
ニヤニヤ笑いながら掬った一匙にパクつく二宮くん。
和「まあ、ウチの兄貴は並外れたイケメンだし、職業柄、人タラシが得意ですしね?好きになっても無理もない話なんですよ。」
「お、俺は別に何も…。」
誤魔化すみたいに、パフェを勢いよく掻き込んだ。
和「あ、そう?何かソイツのことぶん殴ってやる、みたいな空気感じたんだけど?」