マリア
第7章 恋慕曲
ぶん殴ってやりたい、とまではいかないけど、悔しい、って気持ちはあった。
並外れたイケメンで、医者。
精神科医なら、人の心を読み説くのはお手のものだろう。
…か、どうかは知んないけど…。
和「ね、顔、見たくない?」
二宮くんはスマホをちょこちょこ弄り、俺の目の前にスマホの画面を翳した。
和「ね?いい男でしょ?」
ホントだ…。
画面のその男は、颯爽と白衣を着こなし、
男性看護師に何やら指示を出していた。
きりっとした太めの眉。
くっきりした目鼻立ち。
少し厚めの唇。
そして、医者という肩書。
どれをとっても普通の高校生の俺が太刀打ちできる要素なんて何一つなかった。
モテるんだろうな……きっと。
和「でも、この人、フラれてばっかみたいよ?」
「え?」
ウソだろ?
どう見ても逆だろが?
和「彼女ほったらかして、仕事ばっかしてるみたい。」
へぇ……見かけによらずストイックなんだな?
和「あの人の部屋、いつ行っても女っ気ゼロだもん。」
そうして、二宮くんは、智のパフェまでも完食してしまった。