マリア
第7章 恋慕曲
和「ねね、大野さん。今度さぁ、ウチの兄貴の部屋、一緒に遊びに行かない?」
「えっ…?」
二宮くんの突然の提案に、一口、水を飲もうとして持ち上げたコップを思わず取り落としそうになってしまった。
和「大丈夫?」
「う…うん。大丈夫。」
翔「………。」
和「あ!!でも、ウチの兄貴、忙しい人だからなあ…。」
二宮くんは、ゲーム機を脇に置き、スマホを取り出した。
和「病院から呼ばれたらすぐ飛んでっちゃうんだよ。あの人、何でもできるから専門の精神科以外にも需要があるみたいでさ?」
…そんな忙しいのにいつでも話、聞いてくれる、なんて…。
和「どうしたの?ぼーっとして?」
「ん?あ…べ、別に?」
和「一応、兄貴にメールしとくけど、行く、ってことでいいよね?」
と、スマホのパネルの上に忙しなく指先を滑らせる。
和「ウチの兄貴、料理得意だから、何か作ってくれるかもしんないよ?」
楽しみ、と、
二宮くんは嬉しそうにスマホをまたしまいこんだ。
和「あ、そうだ!大野さん、番号、交換しよ?」
が、また、慌てて取り出した。