マリア
第7章 恋慕曲
いつしか俺は、
彼の話に耳を傾けている、と、言うよりは、
笑顔で語る姿に釘付けになってしまっていて、
ああ、美人、って、
やっぱり笑った顔の方が俄然、良いんだな?なんて考えていた。
智「甘いものの好みもほとんど一緒で、二人でいっつも食べにいってたんだ。」
「そうなんだ…」
彼の笑顔に見惚れている裏で俺は、翔ちゃんを羨ましく思っていた。
彼の口から語られる翔ちゃんは彼の中ではいつでもキラキラしてて、
彼の心の、一番大事なとこにしまってある心の一部なんだ、って。
彼にとって、翔ちゃんの存在は、
切っても切り放せない存在なんだ、って。
いつだったか俺が翔ちゃんに言った、
「病気で抱けない妹の代わりにしたら?」
…って、軽々しく口にした自分を恥じた。
智「ね、聞いてる?」
「あっ!?は、はい!!聞いてる!!聞いてますとも!!」
智「ふふっ。相葉くん、て、実は面白い人なんだね?」
「え?そ、そう?」
智「それに、話しやすいし。」
俺に向けられる笑顔。
「……。」
もしかして、手を伸ばせば届くんじゃないか、って思ったら、
気持ちの中で俺の手は、彼に向けて伸ばされていた。けれど、
翔「智くん…?」
その声でまた、その笑顔は俺の手の届かないものなんだと気付かされてしまう。