性犯罪者の本音
第2章 性犯罪者ファイル(1)
無言でコクリとうなずくと、裕太はポケットからフリ※クを取り出して、わたしの目の前に差し出した。
「食べる?」
「ありがとう、せっかくだけどいらない」
「ひょっとして睡眠薬でも入ってると思ってんの?」
「そんなんじゃないよ…」
「ははは、冗談だよ」
無邪気に笑う裕太を見てると、性犯罪を犯すような人間にはとうてい見えない。
「ていうか、さっきの話の続きを聞かせて」
「他人を支配することが、なんでトイレを覗くことにつながるのか知りたい?」
「うん」
「じゃあ、目を閉じてからボクに背中を向けてごらん」
「え…」
こんな展開なんてまったく予想していなかったわたしの体は、まるで凍りついたように硬直した。
けれど裕太はそんなこと、まったく気に留めることもなく、わたしの両肩に手を添えて、そのままクルリと体を回転させた。
「なんでボクがこんなことをしたかわかる?」
背後から聞こえてくる裕太の問いに、無言のままわたしは首を横に振った。
(数秒間、裕太の深呼吸をしているような荒い息づかいが聞こえてくる)
裕太はいったい後ろでなにしているんだろう?
「いまトイレでボクに後ろから覗かれていることを想像してごらん」
「うん、わかった…」
なんとか平静を装って答えることができた。けれど手の震えはいっこうにおさまらない。心臓も早鐘を打っている。わたしの中で、さまざまな予測が交差した。