わたし、お金のためならなんでもします。
第1章 プロローグ
「なにも悩むひつようはないだろう?なぜならおれの場合は10万がなくなる可能性があるが、おまえは失うものは何もない。つまり「リスク0」違うか?」
「それは…」
たしかに男のいう通りだ。いまのところ正解しなかった場合のペナルティを提示されているわけでもないし、言い方は乱暴だけど暴力を振るうような気配はなさそうだし…
それにしても目的はいったいなに?わたしが問題に答えることでこの男になにかメリットある?いや、どう考えてもメリットなんてないはずだ。
「なんか勘違いしてるようだからいちおう言っとく。おまえがこのゲームをやろうとやるまいとおれはどっちでもかまわないんだよ」
「は?」
「おまえがやらなければほかのデリヘル嬢を指名するまでだ。それでもいいのか?」
「え?ちょっ、待っ」
「おいおい勘弁してくれよ、もうじゅうぶん説明しただろ?なのにまだなにかあるのか?これだから女はイヤなんだ、だったら10秒だけ待ってやるから早く答えろ。ようーいスタート!10…9…8…」
「あっ、な、ならヒント…なにかヒントをください」
カウントダウンを耳にした瞬間、ついさっきまで自分の中にあったちっぽけなプライドは、跡形もなくすっかり消し飛んでいた。
「ヒントだと?おまえって図々しい女だな」
「お願いします」
「ちっ、仕方ねーな、一回だけだぞ?じゃあ今回は特別にヒントを教えてやる。おれの病気は感染しない…」
感染しない?ということはエイズと梅毒は消える。つまり答えは末期ガンか多重人格のどちらかということになる…
いったいどっちなんだろう?この男どう見ても末期ガンには見えないけど…
え!?ていうことは、この男は多重人格ってこと?
だけど、正直わかんないんだよなあ。だって去年ガンで亡くなった親戚のおじさんなんて前日までピンピンしてたし…
「3…2…1…」
ていうか、ゆっくり考えてる場合じゃない。