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笑い、滴り、装い、眠る。

第7章 雨の日は家にいて



「はー、いい天気。」



思わず口に出さずにいられないほどの抜けるような綺麗な青空。



季節はもう、桜前線がどこまで来ていて、



いつ、どこに桜が咲くのか、という話題が取り沙汰される時期になった。



しばらくぼんやりと、窓外の流れる雲を眺めていると、誰かが僕の肩をぽんぽんと叩いた。



翔「お待たせ。荷物、全部車の中に運んだよ?」


「ありがと。」



何もなくなった板張りの空間に二人並んで座って、ビールのプルタブを起こした。



「いよいよここともお別れだなぁ。」



ごくごくと喉を鳴らす横で翔くんが不安げに僕を見つめていた。



翔「ねぇ…ホントにいいの?ここ、引き払っちゃって?」


「何で?」


翔「だって、使い勝手がいい、って言ってたじゃん?家賃も格安なんでしょ?」


「そうだけど…ここは広すぎるし、それに…」


翔「前の恋人を思い出すから?」


「それもある…けど…もっと単純な理由だよ?」



と、翔くんの体にピタリと寄り添うようにくっついた。



「翔くんが近くにずっといてくれるから。」


翔「そ、そっか…。」



照れ隠しに、翔くんは缶ビールをぐい、とあおった。



あれ?そう言えば翔くん、このあと確か…



「翔くん…車の運転…」


翔「やっちまった…」



僕の隣で翔くんは頭を抱えた。



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