笑い、滴り、装い、眠る。
第8章 花梨―唯一の恋―
男「もう帰るのか?」
男の腕時計で時間を確認し、ベッドから飛び降りるように出ていく俺に男が声をかける。
「うん。シャワー、借りるね?」
男「洗ってやろうか?」
「いいよ?自分で出来るし?」
男「…そっか。」
男はベッドサイドにあった重そうな灰皿を引き寄せ、咥えていた煙草をその縁で叩いた。
俺は高そうな椅子の背凭れに掛かっていたバスローブを無造作に羽織り部屋を出た。
「いてて…」
途中、腰を支えながらなんとかバスルームに辿り着く。
シャワーで粗方情事の跡を洗い流すと、己の後孔に人差し指を差し込む。
「ぅ……ん」
お湯に紛れてナカから掻き出したものが排水口に吸い込まれてゆく。
「あっ……ん。」
油断してると、自分で自分の敏感な部分に触れてしまって、
まるでオナってるみたいなマヌケな俺を鏡で見ることもある。
バスルームから出て、髪をタオルで拭きながら歩いていると、前方に立ち尽くしている人の気配を感じて、
俺はソイツに倣うように立ち止まった。
翔「…こんにちは。」
「…どうも。」
丁寧な挨拶に素っ気なく返すと、俺はさっきまで情事に耽っていた部屋へと戻った。