笑い、滴り、装い、眠る。
第15章 TO You・・・
智「何か言いたそうにしてた?」
「……うん。」
智「うーん、何だろ?」
智くんは箸を止め、口をもぐもぐ動かしたまま黙ってしまった。
やがて、ゴクン、と飲み込むとまた、箸を進めた。
智「もしかして…」
「もしかして?」
智「翔ちゃんのことが好きなのかも?」
「ま、まさか?」
智「いや、あり得ないことじゃない。」
「いや…だって…」
智「だって、何?」
上目遣いで睨み付ける目が怖い。
普段から余り怒らない人だから、こんな解りやすく怒りを露にするのはあまりない。
と、いうか、見たことがない。
戸惑いを隠せずに目を泳がせると、突然、目の前に座っていた智くんが立ち上がった。
え…?
何が起こるのか、と身構えた途端、智くんの唇が俺の唇に重なった。
智「ご……ごめん。俺……」
「……う……うん。」
さっきの剣幕からは考えられないくらい、優しく肩を抱かれる。
智「翔ちゃんが誰かに取られるかも、って思ったら……。」
「もしかして…妬いてくれたの?」
智くんの顔が一瞬で真っ赤になる。
智「そ、そ、そんなこと…あ、当たり前だろっ!!」
あーもう、智くんてば!!
智「あっ、ち、ちょっと、し、翔ちゃん?」
俺は智くんの体を、渾身の力で抱きしめた。