笑い、滴り、装い、眠る。
第16章 a little guy
バイト上がり。雅紀くんに案内してもらって大野くんの家にやって来た。
雅「ここだよ?」
「あっ…うん。」
あまりの大きさに、家の前で立ち尽くす。
呆然としている俺を後目に、雅紀くんはインターホンを押し、応対に出た人物と当たり前のように言葉を交わしていた。
雅「今開けます、って?」
家の中から大野くんのお母さんらしき女性が慌ただしく出てきて門扉を開けてくれた。
母「いらっしゃい雅紀くん?」
見慣れた顔の隣にある、初めて見る顔に、大野くんのお母さんは一瞬怪訝な顔をする。
雅「あ、この人はプールで監視員のアルバイトをやってる…」
「……櫻井といいます。」
母「はあ…」
監視員のアルバイトごときが何か?と言わんばかりの目で俺を見てくる。
雅「櫻井さん、K大付属高校に行ってるんだって?」
母「まあ……あの有名な進学校の?」
あきらかに母親の目の色が変わった。
それからはすんなりと俺らを中へ通してくれ、見た目もそうだが座り心地のいいソファーへと座らせ、
アイスコーヒーとケーキまで出してくれた。
母「今、智を呼んできますね?」
母親はいそいそとリビングを後にした。