笑い、滴り、装い、眠る。
第4章 愛していると囁いて。
週に一度だけ、
俺はあの人に触れることができる。
その日は、かっちりしたスーツに身を包み、
カメラ目線でかっちりした笑顔を作る。
あ、でも、俺のパブリックイメージ、ってのがあるから、完全に作った笑顔、って訳じゃないけど…
「お疲れさまでした。」
ネクタイを緩めつつエレベーターに乗り込む。
「………。」
段々と高さを落としてゆくガラス張りの景色に、
エレベーターがとても遅く感じた。
前室で私服に着替え目深にキャップを被り、
車ではなく、走って局を出る。
いつもだったら目的地の途中まで車で行くんだけど、
今日は近いからやめた。
指定されたホテルの部屋。
ドアを五回ノックする。
ゆっくり静かに開けられたドアの向こうには、
彼がいた。
智「お疲れさま。」
言葉少なに笑い、奥へ消えようとするその手首を捕まえ、
背中から抱きしめた。
智「翔くん…」
「スッげぇ長かった…。」
智「ふふっ、大袈裟。時々会ってたじゃない?」
「仕事の上で、でしょ?」
あなたはいじわるだ…
そんないじわるなあなたの顔を引き寄せ、
いじわるな唇にキスをした。