
笑い、滴り、装い、眠る。
第16章 a little guy
智side
「翔くん。今日晩ごはん何食べたい?」
翔「そうだなあ…」
翔くんはコーヒーを一口飲み、朝刊を畳んだ。
翔「じゃあ…どっかへ食べにでも行く?」
「え?いいの?」
翔「いいも悪いも…」
徐に翔くんが自分のスマホを僕に見せてきた。
翔「実は今晩、ここの店予約してるんだ。」
見せられたのは、僕が前から行きたかった割烹料理の店。
「ウソ!!嬉しい!!」
あまりの嬉しさに翔くんに抱きついてしまった。
あれ?でも今日、って…
翔「あれから10年。あの日も暑かったよなあ…。」
そこで僕はハッとする。
と、同時にそんな昔のことを覚えていてくれたことが嬉しかった。
翔「あの時はまだ、ランドセル背負ってた、んだなあ、って思ったら、感慨深いものもあるし、な?」
「ランドセル、って…そんなこと思い出さないでよ?恥ずかしい…。」
ごめん?と笑って抱き寄せられる。
そのまま幸せな気分に浸ること数分後、
翔くんのスマホがけたたましく鳴った。
不機嫌そうに耳にあて少し電話の相手と話したあと小さく息を吐いた。
翔「松本。もうすぐ着く、って?」
