笑い、滴り、装い、眠る。
第22章 brothers・番外編
そっと離れの戸を開け入ってみたら、
アニキたちの部屋は意外と静かだったけど俺は足を忍ばせ二階の部屋へと向かった。
部屋はもちろん暗くて、雅紀はもう寝ていた。
「いって…」
今さらだったが、頬の痛みを思い出しコッソリまた下へ降りた。
脱衣室の灯りを付け、そこにあった未使用のタオルを水に濡らし頬に当てた。
鏡に映ったおのれの顔を見たら、少し笑えた。
こんなザマでモテてる、って思ってた自分に。
誰かの気配を感じて振り返ると、洗面器を抱えた智さんが立っていた。
「あ、智さん?」
智 「潤か…どうした?こんな時間に?」
「いや…ちょっと……」
俺は腫れた側の頬を隠すように智さんから顔を逸らした。
智「……なんかあったのか?」
「べ、別に?」
「そんなことより楽しめた?」
智「……いや。」
「?アニキと喧嘩でもした?」
智「そういう意味じゃねえ。ゆっくりは出来た。」
「じゃあ、ゆっくりじっくり、アニキのこと堪能できた、ってことだね?」
智「お前な…」
呆れたようにため息を吐いたけど、
その顔は満足そうだった。
智「そういうお前はどうなんだ?」
顔…見られたか?
「も、もちろん、だよ?」
智「ふーん…。」
必死で顔を隠そうとする俺を訝しげに覗き込んでいたけど、
智さんはお湯で満たした洗面器を抱え足早に去って行った。