笑い、滴り、装い、眠る。
第25章 おクスリの時間です。
花火大会当日。
雅「花火楽しみだね~♪」
潤「そうだな?」
「……。」
俺らの少し前を歩く、濃ゆい&天然二人組。
「えっ?アイツらと一緒なの?」
智「一緒も何も…花火大会に誘ってくれたの、ってアイツらだし?」
そうだったんだ…
花火大会の会場に向かう道すがら俺は、密かにため息をついた。
雅「いいなぁ…にーちゃんと翔ちゃん、浴衣なんか着て…」
潤「雅紀は浴衣なんか着なくても十分可愛いよ?」
雅「もー潤てば♡」
目の前でイチャイチャするデカい二人に呆れたように、さらに大きなため息をつこうとしたら、智くんが俺の手を握ってきた。
智「あ、アイツらばっかに見せつけらてたまるか、って?」
「さ、智くん…♡」
赤くなって顔を逸した智くんの手は、手汗でびっしょりだった。
智「翔くん…」
「何?」
智「浴衣…に…似合って…る。」
「フフッ…ありがと…智くんも。」
智「そ、そう?」
「うん…」
いつの間にか、前を歩く二人とはかなり離れていて、
俺らは二人の時間を噛みしめるみたいにゆっくり歩いていた。
智「翔くん、こっち。」
「えっ?」
智くんが俺の手を強く引き、脇道へと逸れ歩き出す。
「どこ行くの?」
智「いいからいいから♪」
日がだんだんと落ちてきているせいでちょっとした段差に転けそうになりながらもなんとか智くんについてゆく。
智「よかった♪誰もいない。」
「ここ…は?」
智「ほら、ここ座って?」
自分が腰かけた隣をポンポンと叩いた。
智「特等席。翔くんのために見つけといた。」
「俺の……ため?」
智くんが俺のために、と用意してくれた席に腰かけ、
まだ辛うじて明るさを残した空を見上げた。
智「ところで…さ…」
「うん?」
智「何であんなとこに隠してた浴衣、見つけたの?」
「えっ…?」
智「翔くん、滅多に部屋片付けないじゃん?」
悪かったな…ズボラで…。
「で、でも、遅かれ早かれ俺のものになるんだから別にいいでしょ?」
智「ん〜そうだけどさぁ?」
ま、いっかぁ~♪なんて笑いながら話してたら、辺りはすっかり静寂と暗闇に包まれていた。