笑い、滴り、装い、眠る。
第25章 おクスリの時間です。
翔「…ったく、花火見に来てなにしてんだか…。」
翔くんはブツブツ言いながらソファーに座った。
そんな翔くんに俺は、道中コンビニで買ってきた缶ビールを無言で手渡す。
翔「でも、花火、良かったね?」
「ん…。」
俺は缶ビールを口に浸けたまま頷いた。
ホント言うと、俺も花火そっちのけで翔くんとイチャイチャしたかった…。
だから、あの場所に誘ったんだけど?
でも、浴衣着たままいたしちゃったら着付けなんて出来ないし。
だからチューはできてもそれ以上のことは…
翔「……。」
ため息と一緒に、そのままぐびぐびとビールを流し込むと、急に黙り込んだ翔くんの視線を感じた。
「な、何?」
翔「やっぱ…智くんの浴衣姿、カッコイイなあ、と思ってさ?」
ビールのせいかどうかは分かんねぇけど、翔くんの頬がほんのり赤い。
「そ、そうかな?」
翔「うん。色のせいもあると思うけど、シブく見える。」
紺色の無地。
ホントはもっと明るい色にしようかと思ってたんだけど、
母ちゃんにこっちにしろ、って言われたし。
「智は顔立ちが幼いからこっちのほうが大人っぽく見えるわよ?」
…なんていうから渋々だったけど、
翔「何か、日舞のお師匠さんとかみたいで貫禄あるよ?」
「……。」
うーん、喜んでいいのかどうか微妙だ。
翔「うん、すごくカッコいい。惚れ直しちゃった。」
「ま、まじで?」
翔「うん♡」
翔くんは俺のすぐ隣にストンと座って微笑んだ。
翔「ねぇ…智くん。」
「は、はい。」
翔「もうこれ、脱いでいい?」
「そっ、そうだな?帯とかもちょっと苦しいし?」
翔「じゃ、なくて…」
物凄い力で、顔の向きを変えられたかと思ったら、
翔くんにキスされた。
翔「…そう意味に決まってんじゃん?」
床に押し倒された俺に馬乗りになった翔くんが笑った。
「…やっぱり?」
まんまの意味だったか。