笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
似てる、って思った。
顔が、とかじゃなくて、
彼が纏う雰囲気だとか、が。
翔「ん?雨が上がってる。」
「ほんとだ…」
会話を遮るほどに激しい雨音がいつの間にか消えていたことにも気付けなかった程に僕は、
彼の一挙手一投足に釘付けになっていた。
翔「じゃあ、晴れているうちに失礼するんで、連絡先とか?」
「え?あ、はい。ありがとうございます。今、メモを…」
手渡したペンとメモ用紙を前に彼の動きが止まる。
ん?どうした?
ペンを置くと彼はごそごそとジーンズのポケットからスマホを取り出しにっこり笑う。
翔「LINEで連絡しませんか?」
「LINE?」
翔「LINEなら俺、しょっちゅうスマホ眺めてるからすぐ連絡できるし。」
「ふふっ。授業そっちのけでスマホ見てるの?」
翔「ははっ。厳しいですね?」
「今時の若い人なら誰でもそうでしょ?」
翔「あなたこそ。まだ、お若いのに、こんな工房持てるなんて…」
「まだまだ未熟者ですけどね?」
感慨深く、こじんまりとした作業場を見渡す。
小さいけど、唯一僕が自信と誇りを持っていられる場所。
『智、ごめん。これが今の俺がしてやれる精一杯のことなんだ。』
潤……ありがとう。
最後に、行き場のなかった僕にこの場所を与えてくれて。