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罪科の音色

第1章 1

 身長的には推定4歳。少し前に別れた妻が連れて行った子供もちょうどそれ位の年齢だった。等と余計な事を考えていた。

 ――――考えのせいで一瞬ここがどこであるのかさえ忘れていた時、彼女と目が合った。幼く無垢な瞳が私を射抜くと同時に私は声を掛けようとした。
 
 ――お嬢さん、親御さんは?

 だが、その言葉も閉ざされる。

 すぐ側に居た親切そうな紳士が丁度私と同じ行動を取ったのだ。

 少しだけ安心して溜息を吐く。

 とても幼い子だ……さぞかし親も心配している事だろう。きっとすぐに見つかるさ。

 ――そう、自分を納得させ私は適当な飲食用の店舗に向かった。

 店に向かう途中に迷子の放送が流れたが何ら気にすることなど無かった。
 
 ✝︎✝︎✝︎
 
 適当な食事を終えた後、私は腹ごなしも兼ねて店内をブラブラしていた。

 相変わらず人通りは多いものの、もう夜遅くなってしまったせいもあり、店内は大人ばかりとなっていた。子供の影もない――。

 もう、あの迷子に関しても一切気にしていなかった。いいや、寧ろ、忘れかけていたのだ。

 ――もう帰ろうか、という所で。あの無機質な機械音が放送口から漏れるまでは。


『迷子のお知らせです、ピンク色のワンピースを着た4歳の女の子を保護しております。お心辺りのある方は――――』

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