貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
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「そう。……そう。ええ、二日後、夕方には戻るわ。……──。もう、病み上がりでしょう?遊びに行ったりしてはダメよ。会社、ちゃんと有休とってる?……分かった。じゃ」
携帯電話を閉じた里沙が、あずなに振り向いた。
今朝も、絶世の皇子だ。
縦襟にシフォンのリボンタイを結んだブラウスに、チャコールグレーにも深い蒼にも見える薔薇が織り込まれた黒いベスト。それらを合わせた里沙のボトムは、やはり同じ感じの色味のロングパンツだ。細いストライプが入っていて、ふくらはぎの辺りに、シルバーカラーの茨のプリントが巻きつく。艶やかで黒いロングヘアは一つにまとめて流してあった。青い蝶のバレッタが留まっている。
「ごめん、電話、長引いた」
「ううん。里乃さん、風邪治ってきたみたいだね」
思わず里沙に見とれていた。
はたと我に返ったことを悟られまいと、あずなは里沙から目線を離す。
「ええ。神無月さんと会いたかったって、今からでも私と代わらないかって。先週まで寝込んでいた人の言うことだとは、思えなかったわ」
「そっか。里乃さん、神無月さんのファンなんだっけ」
「乙愛ちゃんと、いい勝負なんじゃないかしら」
里沙の視線が、部屋の片隅に畳んであった白いジャンパースカートとパフスリーブのブラウスを捉えた。
昨夜、あずなが乙愛を連れ込んで、脱がせたものだ。