貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
「思い出した」
沢井の手のひらを合わせた音が、あずなのとりとめない雑念を消した。
「三日前かい、来た来た、あのオジさん。えらく質素な女の人と、変わった格好の男の人が来たもんだから、その時ゃ吃驚したんだよ」
そう言えば、ノゾミは澄花と組んでいた。
「オジさん」とは、ノゾミ本人が聞けば半巾をくわえて泣き出しかねない。良い気味である。
「ああ……そうそう、そのあとだったねぇ、皇子様が来て、それでお前さんがお姫様を連れて来た。お前さん達はべっぴんさんだから、関係者だとすぐに分かったんだがねぇ」
「あの、でも、協力店の皆さんは、澄花さんと面識がおありなんですよね?」
「いや、面識があるのは村長だけだ。お姫様のアシスタントさんが下見に来てた時ぁ、見かけたもんはひと握りだよ。あたしゃ見かけなかった」
「おじ様、あたくしこのコケシを五ついただくわ。それから割り箸入れを十と、コップ敷きを三つ頂戴」
「はいよ、お姉さん気前が良いねぇ」
「大事な上司や部下達へのお土産よ。丁寧に、一つずつ包んで下さいな」
またぞろ粘着質な声と、威勢の良い商人の声が、あずならの会話を中断させた。
カゴいっぱいに民芸品を入れたノゾミのレジへ向かう姿が見えた。
仕事もなく、仲間も友人もいないはずのノゾミが、どこの上司や部下に土産を買うのだ。
まるで歯と歯の間に物が詰まった時のように、気持ち悪い。
違和感は、あずなの中で、たちまち胸騒ぎに変わる。
今日までにもノゾミを見てきた中で、あずなはおりふしこうした違和感を覚えたことがある。