貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
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『人形の館』を観て回った後、乙愛と純は、英国風庭園でとりどりの薔薇や温室の植物を楽しんだ。
ここ、水族館では、イルカショーや宝石のような色をした小魚を観た。
そして現在、乙愛はふれあい広場の施設のベンチで休みをとっている。
過普及ない人工の磯だ。岩に張りついたヒトデや浅瀬に身体を浸しているウニが、熱中的な物見客らをいっそ嘲笑ってでもいるように、緩やかな時の中にいる。
乙愛も、たまには豪奢な洋服を脱いで、清らかな恤愛の水に身体を浸してみたくなる。
潮汐波に揺られながら、蒼い海の深淵で、神秘的な無に包まれたなら、身も魂(こころ)も生まれ変われるのではないか。…………
穢れない、妖精とやらの気分にでもなれるのではないかと空想しては、ふと、あずなの顔が頭に浮かんだ。
にわかに男女のがなり声が、自動ドアを横溢した。
ともすれば爆音にも聞こえたそれは、ざわざわと乙愛に迫り来る。
まるで群れている自分達を顕示している雑音は、正気を疑う笑い声。そこまでの声を上げなければ相手に伝わらないとでも思っているのか、彼らのそれは、耳にしている乙愛の方が恥ずかしくなる。
父、敏也が必要以上にボリュームを上げるラジオの音も頭に響くが、彼らの声もいい勝負だ。
案の定、着飾った獣紛いの少年達と、奇抜な少女達が連れ立っていた。