貴女は私のお人形
第6章 もし、二人、似ているなら
「うわー見ろよヒトデ!太った星だぜ!」
「なーに喜んでやんの、田舎モンかぁ?!生物の授業に出たろ。海の生物達はぁ、って、栗原のハゲが黒板に下手くそな絵、書いてたじゃん」
「あたしぃ、授業寝てたから分かんねー。それかダチとメールしてる」
「早織昨日も寝てたよな。補講だってのに先公の目、盗んで、マサキとメールしてやんのー」
「仕方ねーじゃん、コイツよその女と歩いてたんだぜ。あたしがガッコに軟禁されてる時にー」
「希奈は姉貴だっつってんだろ!彼氏に大人の玩具をプレゼントしたいっつーから、プロの俺様がアドバイスに行ってやったんだよ」
「うへー!お前らそんなことやってんの?!ヒュー」
「あたし伸吾にぞっこんだし」
「がはははははは」
下着が覗けようほど短いワンピースからにょきりと伸びた少女の脚が、乙愛の目前を闊歩していった。けだし彼女は、ドロワーズも履いていない。
彼女と笑い合っている少女は、金色のブレスレットを肩が凝ろうほど重ねて、アッシュの髪を昔のフランス貴族よろしく結い上げていた。目の上はシルバーグレーだ。ひと昔前「ヤマンバ」と揶揄されていたヘアメイクだろう。
耳朶が千切れそうなくらいのピアスをつけて、脂ぎった鎖骨をひけらかした少年と腕を絡めた少女は、ジャージ姿だ。まさかこれからスポーツジムへ行くとは思えない。
他にもホストを気取った少年や、だらしのないワンピースから真っ黒な脚を出した少女が、磯の周りを跋扈していた。
純は、家族に電話をかけに向かった。こんなことになるのであれば、乙愛の携帯電話を貸せば良かった。
「わー!あれ見てあれ!」
さばかり若い少女のものとは思えない、しゃがれた奇声が飛び抜けた。
「うわっ、メイド!」
「ゴスロリじゃねぇの?エプロン着けてねーし」
乙愛が彼らと目を合わせまいとしていた努力も空しく、彼らの注意が第三者に向いた。